離婚時の不動産の財産分与とローン支払い方法
離婚をする際には、夫婦の財産を清算する目的で「財産分与」が行われます。 夫婦の財産が現金や預貯金だけであれば特に複雑…[続きを読む]
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夫婦が離婚をする際には、数多くの項目についてお金の精算を行う必要があります。
ご自身の正当な権利を実現し、かつ離婚後のトラブルを防止するためにも、離婚時に必要な事項を漏れなく取り決めておきましょう。
【関連リンク】取扱分野|離婚
この記事では、離婚時に発生する金銭的な請求・精算について、網羅的に解説します。
目次
離婚時に問題となる金銭的な請求・精算のうち、金額が比較的大きくなりやすいのが「財産分与」です。
財産分与には、以下の3つの要素があるとされています。
夫婦の共有財産を、夫婦間で公平に分けるという考え方
離婚の原因を作ったことに関する慰謝料を、財産分与の中で加味するという考え方
配偶者の収入減少を離婚後一定期間にわたって補償するため、財産分与の金額を調整するという考え方
基本的には、①の「清算的財産分与」の考え方をベースとしたうえで、必要に応じてその他の要素を考慮するという形をとります。
財産分与の対象となるのは、夫婦の共有財産です。
これに対して、財産分与の対象にならない、夫婦のうちどちらか一方が単独で有する財産を「特有財産」といいます。
以下の財産は特有財産とされており(民法762条1項)、財産分与の対象になりません。
その一方で、夫婦のどちらかが購入した不動産や有価証券、夫婦のどちらかが稼いだ収入などは、配偶者の協力もあって獲得したものという側面があるため、原則として財産分与の対象となります。
住宅ローンが残っている家の土地・建物を財産分与する場合には、「オーバーローン」「アンダーローン」のいずれであるかに注意する必要があります。
住宅ローン付の家は、基本的に債務者と所有者(居住者)を一致させる必要があります。
よって家に住み続ける側は、オーバーローンであればマイナスの財産を、アンダーローンであればプラスの財産を取得します。
したがって、オーバーローンの場合、家を出ていく側から住み続ける側に対して、金銭を支払うなどの方法で調整が行われるケースが多いです。
中でもよくあるのは、離婚後も子持ちの妻がマイホームに住み続け、元夫が住宅ローンの支払いをする、というケースです。
参考:離婚と住宅ローン|妻が住むには、借り換えか?銀行に相談すべき?
反対にアンダーローンの場合、家に住み続ける側から出ていく側に対して、金銭の支払いなどが行われます。
また、住宅ローン付の家に関する財産分与関係をすっきりさせるには、家を売却してしまうことも一つの手段です。
その場合は、売却後に住宅ローンを返済した場合の手残り(または足が出た場合の返済金)について、公平に分与(分担)することになるでしょう。
なお、不動産を財産分与すると、高額な税金が課税されてしまう可能性があります。
財産分与と税金との関係については、財産分与前にきちんと専門家に相談をしてアドバイスを受けることが大切です。
財産分与は、当事者が合意すればいつでも行うことができます。
ただし、どちらか一方が財産分与に応じない場合、家庭裁判所の財産分与請求調停・審判を利用できるのは、離婚の時から2年間に限られることに注意が必要です(民法768条2項)。
参考:財産分与請求調停|裁判所
財産分与の一環ではあるものの、他の財産とは異なる特殊な取り扱いがなされているものとして、「年金分割」があります。
年金分割とは、夫婦間で婚姻期間中の厚生年金保険の加入記録を分割することをいいます。
厚生年金保険は、公的年金の「2階部分」と称されるように、払い込んだ保険料に応じて、将来の年金が増額されます。
つまり、厚生年金保険の加入記録は、実質的に将来に向けた貯蓄・資産としての意味を有するのです。
厚生年金保険料は収入に応じて決まるほか、自営業者や専業主婦などは、そもそも加入することができません。
そこで、離婚時の財産分与の一環として、夫婦それぞれの厚生年金保険の加入記録を分割し、年金受給権についても夫婦間の公平を図るものとされています。
年金分割の方法には、「合意分割」と「3号分割」の2種類があります。
「合意分割」とは、夫婦間の合意によって年金分割の方法を決定することをいいます。
これに対して「3号分割」は、国民年金の第3号被保険者(相手方の扶養に入っていた人)からの請求によって、相手方の同意がなくても2分の1ずつ年金分割を行うことができる制度です。
離婚協議が暗礁に乗り上げた場合は、3号分割の制度の活用もご検討ください。
参考:離婚時の厚生年金の分割(3号分割制度)|日本年金機構
相手方が離婚の原因を作り出した場合には、「慰謝料」を請求できる場合があります。
慰謝料とは、精神的な損害に対する賠償金を意味します。
離婚時の慰謝料請求権は、不法行為(民法709条)を根拠としています。
離婚=慰謝料というイメージをお持ちの方も多いところですが、離婚慰謝料は常に発生するわけではありません。たとえば性格の不一致、方向性の違いなど、離婚の原因が「お互い様」であるケースでは、慰謝料が問題にはならないのです。
慰謝料が発生する典型例としては、不貞行為(不倫)・DV・モラハラなどのケースが挙げられます。
金額相場は、行為の悪質性などによって変わりますが、おおむね300万円以下になることが多いです。
不貞行為(不倫)が原因で離婚に至った場合、離婚慰謝料を不倫相手に対して請求することも可能です。
この場合、配偶者と不倫相手は「不真正連帯債務」を負い、どちらが請求を受けたとしても、慰謝料全額を支払わなければなりません(ただし、二重取りは不可です)。
離婚時における金銭的な精算の中で、見落とされがちなのが「婚姻費用」です。
離婚の前に別居期間がある場合、その期間は夫婦が別々に生活します。
別居期間中の生活水準は、夫婦それぞれの資産・収入に依存しますが、婚姻が継続している以上は、相手方の分も含めて、夫婦は公平に生活費など(婚姻費用)を分担しなければなりません(民法760条)。
また、子と同居するのはどちらか一方の親だけですので、子の養育に必要な費用も分担する必要があります。
そこで、夫婦双方の収入・子との同居状況・子の人数などに応じて、別居期間中の婚姻費用につき、離婚時に精算が行われます。
離婚時に精算する婚姻費用の金額は、裁判所が定める「婚姻費用算定表」に従って計算するのが一般的です。
参考:養育費・婚姻費用算定表|裁判所
<設例>
・義務者の年収は500万円(給与)
・権利者の年収は300万円(給与)
・子は1人(10歳、権利者と同居)
設例のケースでは、14歳以下の子が1人、権利者と同居しているので、表11の「婚姻費用・子1人表(子0~14歳)」を用います。
義務者の年収は500万円(給与)、権利者の年収は300万円(給与)なので、それぞれがクロスするポイントの金額は「6万円~8万円」のレンジの中腹あたりです。
そのため「7万円」程度が、離婚時に精算すべき婚姻費用(月額)の目安となります。
離婚をしても、子に対する扶養義務(民法877条1項)は継続します。
この扶養義務を両親が公平に分担するため、離婚時に「養育費」の支払いを取り決めておきましょう。
夫婦が離婚した後は、子の親権者はどちらか一方に定められます。
基本的には、子と同居するのは親権者のみですので、子の生活費は親権者が負担することになるでしょう。
その一方で、親権者ではなくなり、子と同居しない親(非同居親)は、同居親に対して養育費を支払うことで、子に対する扶養義務を果たすことになります。
養育費の金額は、裁判所が定める「養育費算定表」に従って計算するのが通例となっています。
参考:養育費・婚姻費用算定表|裁判所
養育費算定表では、夫婦の収入・子の人数・子の年齢によって、養育費の金額が決まる仕組みとなっています。
<設例(再掲)>
・義務者の年収は500万円(給与)
・権利者の年収は300万円(給与)
・子は1人(10歳、権利者と同居)
設例のケースでは、14歳以下の子が1人、権利者と同居しているので、表1の「養育費・子1人表(子0~14歳)」を用います。
義務者の年収は500万円(給与)、権利者の年収は300万円(給与)です。
婚姻費用と同様に、それぞれがクロスするポイントの金額は確認すると、「4万円~6万円」のレンジの下半分あたりとなります。
そのため「5万円」程度が、養育費(月額)の目安です。
これまで解説したように、夫婦が離婚をする際には、多くの項目にわたって金銭の精算を取り決めなければなりません。
その際、相手方の提示する条件が合理的であるかどうかを、十分に精査する必要があります。
また、離婚後のトラブルを防止するため、取り決める事項に漏れがないかをチェックすることも大切です。
弁護士にご相談いただければ、裁判例を中心とした離婚実務を踏まえたうえで、離婚条件について合理的な落としどころを探ることができます。
弁護士は、相手方との交渉・調停・訴訟を一括して代理人として活動いたしますので、ご依頼者様本人のご負担も大きく軽減されるでしょう。
さらに、離婚後のトラブル防止に役立つ離婚協議書(公正証書)の作成についても、弁護士が最初から最後までサポートして参ります。
参考:離婚問題で弁護士は必要か?弁護士なしでも問題ないか解説
離婚に関するご事情は、ご家庭によってさまざまです。ご依頼者様の不安やお悩みをしっかりと把握し、最適な解決ができるようサポートして参ります。
配偶者との離婚をご検討中の方は、ぜひお早めに、あたらし法律事務所へご相談ください。
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