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相続財産清算人とは|相続財産管理人との違いと民法改正

相続財産清算人とは|相続財産管理人との違いと民法改正

2023年4月1日施行の改正民法により、従来の「相続財産管理人」は、「相続財産清算人」に名称が変更されました。

相続財産清算人は、相続人がいない場合に相続人に代わって相続財産を管理し、債権者・受遺者への弁済や、特別縁故者への相続財産の分与の手続きを行う人です。
民法改正により単なる名称変更だけでなく、内容についてもいくつか変更点がありますので、しっかりと押さえておくことが大切です。

今回は、民法改正を踏まえて、相続財産清算人と相続財産管理人の違いについてわかりやすく解説します。

1.相続財産清算人とは

早速ですが、相続財産清算人にはどのような役割があるのでしょうか。

1-1.相続財産清算人の役割

相続財産清算人とは、相続人のあることが明らかでないときに、相続人に代わって相続財産の管理・処分を行う人のことをいいます。

相続人のあることが明らかでないときとは、以下のいずれかに該当する場合です。

  • 戸籍上相続人がいない
  • 戸籍上の相続人がいるものの、全員相続放棄をした
  • 被相続人が外国籍で相当の調査をしても相続人を把握できない

また、相続財産清算人の主な役割は、以下のようなものが挙げられます。

  • 相続財産を処分し、債権者や受遺者への弁済を行う
  • 特別受益者に対して相続財産の分与を行う
  • 最終的に残った相続財産を国庫に帰属させる

1-2.相続財産清算人の選任が必要なケース

相続財産清算人の選任が必要なケースには、主に以下のようなケースがあります。

①被相続人の債権者が債権回収を行うケース

被相続人の債務(借金)は、相続財産とともに相続人に引き継がれます。
相続人がいる場合には、債権者は相続人に対して請求することができますが、相続人がいなければ誰にも請求することができません。

このような場合でも相続財産が残されているなら、債権者は、相続財産から債権回収を行うことができます。

しかし、勝手に相続財産を処分することはできませんので、相続財産から弁済を受けるためには、相続財産清算人の選任が必要になります。

②相続放棄後の空き家の管理責任を免れたいケース

相続人は、相続放棄をすることで相続財産に関する一切の権利義務から解放されることになります。

しかし、相続財産を現に占有している相続人は、相続放棄をしたとしても相続財産清算人に財産を引き渡すまでは、当該財産の管理責任を負うことになります(民法940条)。
例えば、相続放棄をしたからといって空き家を放置していると、老朽化による倒壊や火災などにより他人に損害を与えてしまうと損害賠償請求をされるリスクがあるでしょう。

このようなリスクを避けるためには、相続財産清算人の選任が必要になります。

③特別縁故者として財産分与を受けたいケース

特別縁故者とは、相続人以外で亡くなった被相続人と特別な関係にあった人をいいます。
例えば、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者が特別縁故者に該当します(民法958条の2)。

特別縁故者は相続人ではありませんので、被相続人が亡くなったとしても遺産を相続することはできません。
しかし、被相続人に相続人がいない場合には、特別縁故者に対する財産分与の申立てをすることで、相続財産の全部または一部をもらうことができます。

このような手続きをする前提として、相続財産清算人の選任が必要になります。

2.相続財産清算人と相続財産管理人との違い

2023年4月1日施行の改正民法により従来の「相続財産管理人」が「相続財産清算人」へと名称変更されました。
さらに、新たに「相続財産管理人(※従来の相続財産管理人とは異なります)」制度が設けられました。

以下では、相続財産清算人と新・旧相続財産管理人との違いを説明します。

2-1.権利関係の確定に必要な期間の短縮

旧相続財産管理人制度では、権利関係の確定に

  1. 相続財産管理人の選任公告
  2. 相続債権者等に対する請求の申し出をすべき旨の公告
  3. 相続人の捜索公告

という手続きが必要だったため、最低でも10か月程度の期間を要していました。

しかし、相続財産清算人制度では、上記①~③までの手続きを同時または並行して行うことができるようになりましたので、権利関係の確定に必要な期間が6か月程度に短縮されています。

2-2.役割と権限

相続財産清算人は、相続財産の管理・処分を行い、債権者・受遺者への弁済、特別縁故者への財産分与、残余財産の国庫帰属という手続きを行う役割と権限を有しています。

これに対して、新相続財産管理人は、相続財産の管理(保存行為)のみで、相続財産を処分する権限や役割はありません。

3.相続財産清算人を選任する手続き・流れ

相続財産清算人を選任する場合の手続きは、以下のような流れになります。

3-1.利害関係人または検察官による申立て

相続財産清算人を選任するためには、裁判所に相続財産清算人の選任申立てを行う必要があります。
申立てをすることができるのは、以下のいずれかに該当する人です。

  • 利害関係人(被相続人の債権者、受遺者、特別縁故者などが含まれます)
  • 検察官

3-2.裁判所による審理

相続財産清算人の選任申立てがなされると、裁判所は、相続財産清算人を選任する要件である「相続人のあることが明らかでないとき」という要件を満たしているかどうかを審理します。

3-3.相続財産清算人の選任

裁判所による審理の結果、相続財産清算人の選任要件を満たしていると判断された場合、相続財産清算人が選任されます。

相続財産清算人は、相続財産の管理・処分という法的手続きが必要になりますので、弁護士や司法書士といった専門家が選任されるケースが多いです。

4.相続財産清算人の選任申立てに必要な書類および費用

最後に、相続財産清算人の選任申立てに必要な書類および費用について説明します。

4-1.相続財産清算人の選任に必要な書類

相続財産清算人の選任に必要になる書類としては、以下のような書類が挙げられます(事案により必要書類は変更しますので、以下はあくまで一例です)。

  • 申立書
  • 財産目録
  • 財産を証明する資料(預貯金通帳、有価証券の残高証明書、不動産登記事項証明書など)
  • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の父母の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 利害関係人からの申立ての場合は利害関係を証する資料

4-2.相続財産清算人の選任に必要な費用

相続財産清算人を選任する際には、以下のような費用がかかります。

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(申立てをする裁判所に金額を確認)
  • 官報公告料5075円
  • 予納金

相続財産清算人には、相続財産の中から報酬が支払われます。

相続財産の額が不足し、相続財産清算人への報酬が支払えない場合、申立人は、相続財産清算人への報酬として不足する金額を予納金として納付する場合があります。

5.まとめ

相続放棄をした空き家の管理に悩まされている、特別縁故者として相続財産の分与を受けたいという場合には、相続財産清算人を選任する必要があります。

相続財産清算人の選任には、書類収集や申立書の作成などの手間がかかりますので、自分で手続きを進めることに不安がある方は、専門家である弁護士に相談するのがおすすめです。
お困りならば、あたらし法律事務所の弁護士までお気軽にお問い合わせください。

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