顧問弁護士を持つ6つのメリット
顧問弁護士の必要性を漠然と感じているものの、顧問弁護士を利用することによってどのようなメリットがあるかわからず、利用…[続きを読む]
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労働者との間で、解雇や雇い止めに関してトラブルが生じた場合には、まずは話し合いでの解決を試みることになります。
しかし、話し合いでの解決が難しい場合には、労働者の側から労働審判を申し立てられる可能性があります。
労働審判を有利に進めていくためには、労働審判の手続き全体の流れを把握しておくことが大切です。
今回は、元従業員に労働審判を申し立てられた場合の対応方法について解説します。
目次
労働審判とは、労働者と使用者との間で生じた労働関係のトラブルを解決するための裁判所の手続きです。
労働審判は、労働審判官(裁判官)1名、労働審判員2名で組織される労働審判委員会が審理・判断をおこないます。
労働審判員は労働問題に関する豊富な経験と知識を有する人の中から任命されますので、実態に即した公正な判断が期待できる手続きといえます。
また、労働審判は、原則として3回以内の期日で審理を終えることとされていますので、裁判に比べて迅速な解決が期待できる手続きであるともいえます。
実際の平均審理期間も77.2日であり、ほとんどの事件が申立てから3か月以内に終了しています。
なお、労働審判の手続きは、解雇・雇い止め・給料の未払いといったトラブルで利用されることが多いです。
労働審判は、以下のような流れで進んでいきます。
会社側で正当な手続きを踏んで解雇や雇い止めなどをしたとしても、そのような処分に不満を抱いた労働者との間でトラブルが生じることがあります。また会社側と給料の未払額に関する見解に相違点が生じることもあります。
労働者との間でトラブルが生じてしまった場合には、まずは当事者同士の話し合いによって解決を図ることになります。
当事者同士の話し合いで解決することができない場合には、労働者から労働審判の申立てがなされることがあります。
労働審判の申立ては、会社の住所地などを管轄する地方裁判所に申立書を提出する方法によって行われます。また労働審判の申立書と一緒に、申立の裏付けとなる証拠の提出も行われます。
労働者からの労働審判の申立てが裁判所に受理されると、裁判所は、原則として申立日から40日以内の日を第1回期日として指定します。そして、裁判所は、第1回期日の日時が記載された呼出状と労働者から提出された申立書の写しなどを会社に送付します。
会社は、裁判所からこれらの書類が届いた時点で、労働審判の申立書の内容を知ることになります。
裁判所から呼出状、申立書の写しなどを受け取った会社は、定められた期日までに答弁書を作成して、裁判所に提出をしなければなりません。
答弁書とは、労働者からの申立て内容を踏まえた会社側の反論を記載した書面になります。反論を裏付ける証拠などがある場合には、答弁書と一緒に裁判所に提出する必要があります。
申立人である労働者および相手方である会社(代表者、担当者)は、指定された期日に裁判所に出頭します。
第1回期日では、労働審判委員会から両当事者に対して質問がなされますので、その内容に答えていくことになります。
労働審判委員会からの質問が一通り終わった段階で、話合いによる解決を目指して、労働審判委員会から当事者に対し個別に事情聴取が行われます。
労働審判委員会は、各当事者からの事情の聴取によって、どのラインであればお互いの譲歩が可能であるのかを探っていくことになります。また、当事者双方に対して調停案の提示を行う場合もあります。
第2回目以降の期日についても、第1回期日と同様に当事者から提出された準備書面および証拠を踏まえて、当事者双方への質問や個別の事情聴取が行われます。
さらに話合いによる解決の可能性がある場合には、第1回目と同様、話合いが行われます。
当事者双方が話合いにより合意をした場合には、調停成立によって労働審判の手続きは終了します。
他方、調停が成立しない場合には、労働審判委員会による審判が行われます。労働審判は、訴訟でいうところの判決のようなものであり、労働審判委員会から審判主文と審判理由の要旨が告げられ、労働審判の手続きは終了します。
労働審判から2週間以内に双方の当事者から異議申立てがなければ労働審判は確定します。
しかし、2週間以内に異議申立てがあれば、労働審判は効力を失い、自動的に訴訟手続きに移行します。
労働者から労働審判を申し立てられた場合の会社側の対応のポイントとしては、以下のものが挙げられます。
労働審判は、原則として申立日から40日以内の日が第1回期日として指定されることになります。そのため、会社に申立書が届いた時点では、第1回期日まで1か月程度しか時間がなく、さらに、期日の前に提出する書類(答弁書)の準備もする必要があります。
対応に迷っているとあっという間に第1回期日が来てしまいます。
労働審判は、話し合いの手続きという側面もあるものの、話し合いで解決できなければ審判が行われることになります。話し合いを有利に進めるためにも、有利な内容の審判を獲得するためにも、労働審判手続きに詳しい弁護士のサポートは不可欠です。
裁判所から労働審判の申立書の写し、呼出状などが届いた場合には、すぐに弁護士に連絡をして対応を検討するようにしましょう。
労働審判は、原則として3回以内の期日で終わることになっていますので、労働審判委員会は、第1回期日までに提出されている申立書、答弁書、証拠によってある程度の心証を形成します。
そのため、会社側としては、第1回期日までに提出する答弁書を充実した内容にすることが大切です。
答弁書の作成に充てることができる期間は1か月もありませんので、早めに弁護士に相談をし、答弁書の作成にとりかかってもらうことが必要となります。
労働者の主張に対する反論を裏付ける証拠についても早めに収集しておくようにしましょう。
労働関係のトラブルが生じた段階で弁護士への依頼をする会社も多いかもしれませんが、トラブルの予防やトラブルの解決の視点からは、顧問弁護士の利用も有効な手段となります。
顧問弁護士を利用していれば、普段から気軽に相談をすることができますので、労働審判に発展するようなトラブルになる前に問題を解決することが可能になります。
また、仮に、労働者から労働審判を申し立てられたとしても、顧問弁護士であれば会社の実情を十分に把握していますので、労働審判への対応を依頼する場合でも実情に即した事案の処理を進めてもらうことが期待できます。
日本弁護士連合会の「中小業者のための弁護士報酬の目安」によると、顧問契約のない弁護士が、労働審判と類似の仮処分手続きで会社の代理人となる際の報酬について、次のような回答をしており、7割程度の弁護士が労働審判と報酬は、異ならないとしています。
着手金 | |
---|---|
10万円前後 | 3.6% |
20万円前後 | 11.2% |
30万円前後 | 46.1% |
40万円前後 | 9.5% |
50万円前後 | 18.8% |
その他 | 1.0% |
報酬金 | |
---|---|
20万円前後 | 18.1% |
30万円前後 | 25.0% |
50万円前後 | 33.2% |
70万円前後 | 6.9% |
90万円前後 | 3.3% |
その他 | 0.7% |
これによると、最も多いのが、着手金で「30万円前後」、報酬金で「50万円前後」次いで多いのが、着手金で「50万円前後」報酬金「30万円前後」でとなっています。
したがって、労働審判における弁護士費用の相場は、概ね60万円から100万円程度と言えるでしょう。
ただし、弁護士によっては、裁判所に出廷する日当や、着手金・報酬金以外の費用が発生することがあります。
事前に直接確認することをお勧めします。
では、労働審判を申し立てられた場合の会社側の対応のポイントをまとめておきましょう。
特に、労働審判では第1回期日までに申立書、答弁書、証拠を裁判所に提出しなければなりません。労働問題に強い弁護士のサポートが重要になります。
また、第1回期日は、事実関係の確認が行われることから、弁護士任せにせず、代表者や担当者が出席することが望ましいと言えます。弁護士としっかり相談し、誰が出席するのかを決める必要があります。
労働者を解雇したり、雇い止めをしたりする場合には、法律上の厳格な要件を満たさなければならず、安易にこれらの手続きを進めていくと労働者との間でトラブルが生じるリスクが生じます。
このようなトラブルを回避するためには、普段から顧問弁護士に相談をするなどして、法的に問題がないように手続きを進めてくことが大切です。
また、労働者から労働審判の申立てをされたという場合には、第1回期日まで時間が限られていますので、すぐに弁護士に相談をして、具体的な対応を検討していくようにしましょう。
労働問題でお困りの方は、あたらし法律事務所にどうぞご相談ください。
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