不動産の相続登記とは?登記手続きの必要性・方法・費用などを解説
相続登記ってそもそも何? 不動産を相続したら登記しないといけないの? 相続登記はどうやってすればいい? など、相続登…[続きを読む]
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被相続人の賃貸マンションやアパートを相続すると、賃貸借契約の処理など、賃貸不動産の相続手続きも必要になります。
そのため、一般的な不動産の相続手続きに比べて複雑になることがあり、トラブルにならないように、必要となる手続きをしっかりと理解しておくことが大切です。
今回は、貸主(大家)が死亡した場合の賃貸マンション・アパートの相続について解説します。
目次
賃貸物件の貸主が死亡して相続が開始すると、借主との間の賃貸借契約はどうなるのでしょうか。
不動産の賃貸借契約は、賃貸物件の貸主が死亡したとしても、貸主と借主との間の賃貸借契約はそのまま存続し、当事者(賃貸人・賃借人)の死亡によって終了することはありません。
しかし、貸主本人は死亡していますので、遺産を分割するまでは、賃貸人としての地位を含む被相続人の遺産すべてを相続人全員で承継します。そのため、相続開始によって、貸主の地位は貸主の相続人に承継されます。
一方、被相続人が遺言書に賃貸人たる地位を承継する相続人を記していれば、指定された相続人が賃貸人の地位を承継します。ただし、相続人全員が合意すれば、遺言書と異なる遺産分割も可能です。
賃貸不動産を契約する際には、賃借人から賃貸人に対して敷金が支払われるのが一般的です。敷金は、賃貸借契約から発生する一切の債務を担保する目的で支払われるお金であり、賃貸借契約が終了した後にその全部または一部が賃借人に返還されます。
このような敷金返還債務についても、法律上、賃貸人の地位とともに移転するものとされていますので(民法605条の2第4項)、貸主の死亡により貸主の相続人に承継されます。
遺産分割協議が成立した後は、賃貸人の地位を承継した相続人が賃貸物件の賃料を取得します。
では、相続開始から遺産分割成立までの間の賃料は誰が取得するのでしょうか。
この点について、判例では、相続開始から遺産分割までの間に生じる賃料債権については、遺産とは別個の財産であり、各相続人が相続分に応じて確定的に取得すると判断しています(最高裁判所平成17年9月8日判決)。
したがって、相続開始から遺産分割協議成立までの賃料債権は、遺産分割の対象には含まれず、各相続人がそれぞれの相続分に応じて取得することになります。
では、賃貸マンション・アパートのオーナーである貸主が亡くなると、どのような相続手続きが必要になるのでしょうか。
相続開始後、複数の相続人がいれば、相続人全員が賃貸人の地位を有することになります。
しかし、複数の相続人が賃貸人の地位を有している状態では賃貸マンション・アパートの管理をする際に、意見が分かれ不都合なこともあります。そのため、一般的には、遺産分割協議によって賃貸人の地位を承継する相続人を決めます。
遺産分割協議の成立後には遺産分割協議書を作成し、それ以降は賃貸人の地位を承継した相続人が賃貸マンション・アパートの管理を行います。
遺産分割協議によって賃貸マンション・アパートを相続することになった相続人は、登記名義を被相続人から相続人へと変更する必要があります。これを「相続登記」といいます。
賃貸人の地位を承継した相続人は、相続登記をした後でなければ、賃借人に対して賃貸人としての地位を主張することができないとされています(民法605条の2第3項)。
したがって、賃貸人の地位を承継することになった相続人の方は、賃料請求の前に相続登記を行う必要があります。
なお、以前は相続登記に期限はありませんでしたが、法改正により期限が設けられました。詳しくは、以下のコラムをご一読ください。
被相続人が所有していた賃貸マンションやアパートには、建設時に金融機関から借り入れた借金が残っていることがあります。
そのような借金についても、相続の対象に含まれますので、相続人が各自の法定相続分に応じて負担をするのが原則となります。
たとえ相続人間で、賃貸人の地位を承継した相続人がこうした借入金を負担する旨の合意をしても、相続人の内部で有効に成立するだけで、債権者である金融機関がこの合意に拘束されることはありません。
そのため、債務を負担することになった相続人が金融機関への支払いを怠ったときは、他の相続人が請求される可能性があり、請求されてしまうと、相続人内部の合意をもって請求を拒むことはできません。
高額な借入金が残っていれば、場合によっては相続放棄を検討する必要もあります。
賃貸人の地位を相続した相続人は、賃借人に対してどのような手続きをとればよいのでしょうか。
賃貸人が死亡したことによって、賃料の振込先などが変わる可能性がありますので、まずは、賃貸人が死亡した旨を賃借人に連絡するようにしましょう。
しかし、一般的に賃貸借契約の締結は不動産会社を介して行いますので、賃借人は誰が賃貸人であるかを把握していないのが通常です。
賃貸不動産の管理を不動産会社が行っていれば、不動産会社への連絡が必要になります。
賃貸人の地位を承継する相続人が決まった後は、相続登記により不動産の名義変更を行います。
その後、賃借人に対して新賃貸人の住所、氏名、連絡先などを記載した賃貸人変更通知書を送付するとともに、新たな賃料の振込先についても連絡するようにしましょう。
前述の通り、貸主が死亡したとしても、賃貸借契約が終了することはなく、従前の賃貸借契約の内容がそのまま継続されます。そのため、貸主が死亡したとしても、新賃貸人と賃借人との間で賃貸借契約書を作り直す必要はありません。
もっとも、相続によって賃貸人の変更があったことは、客観的に明らかにしておくことが望ましいといえますので、新賃貸人と賃借人との間で「賃貸人変更に関する覚書」を作成しておくとよいでしょう。
では、賃貸人が生前にできる相続対策にはどのようなものがあるのでしょうか?
相続人間での争いを回避するために、被相続人となる方ができることの一つに、遺言書の作成が挙げられます。
遺言書を残しておけば、原則として相続人は遺言書に沿って相続するため、遺産分割協議の必要がなく、無用な争いが発生する確率を下げることができます。ただし、遺言書を作成する際には、遺留分には配慮する必要があります。
賃貸人ができる相続税対策には、次のものが挙げられます。
詳しくは、税理士などの専門家に相談するといいでしょう。併せて相続税の納税資金対策をしておくとさらに安心です。
賃貸人であっても認知症などで判断能力がなくなると、契約などの法律行為ができなくなってしまいます。そのため、判断能力がしっかりしているうちに、任意後見制度の利用や家族信託の利用を検討するといいでしょう。
被相続人が賃貸マンションやアパートを所有していた場合には、通常の相続手続きのほかにも、賃貸人の地位を承継した相続人による賃貸借契約の処理などの手続きも必要になってきます。
そのため、賃貸不動産を含む相続では、相続人同士のトラブルだけではなく、賃借人との間でもトラブルが生じる可能性もありますので注意が必要です。
このような相続問題を適切に解決するためには、専門家である弁護士のサポートが不可欠となりますので、相続開始後はお早めにあたらし法律事務所にご相談ください。
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