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仮差押とは|差押との違い、流れ、供託金の金額相場

仮差押とは|差押との違い、流れ、供託金の金額相場

債権回収を行うためには、原則として裁判により勝訴判決を得てから強制執行の手続きを進めていくことになります。
しかし、裁判で判決が出るまでには時間がかかりますので、その間に債務者が財産を処分または隠匿してしまうリスクがあります。

このようなリスクを回避する手段が「仮差押」です。仮差押を行うことで債権回収をより確実なものにすることができますので、積極的に利用するのがおすすめです。

今回は、債権回収の手段として利用される仮差押の効果や手続きの流れなどについて、わかりやすく解説します。

1.仮差押とは?

1-1.仮差押とは?

仮差押とは、裁判所の命令で債務者の財産を仮に差し押さえることにより、債務者が財産を勝手に処分できないようにする手続きです。

債権回収をするためには、通常は訴訟を提起し、勝訴判決を得てから強制執行を申し立てるという流れになります。
しかし、裁判で判決が出るまでは半年〜1年程度の期間がかかりますので、勝訴判決を得たとしても、その間に債務者に財産を処分・隠匿されてしまうと裁判に勝っても債権回収ができなくなってしまいます。

このリスクに備え、債務者による財産処分を防いで債権回収の可能性を高めるために事前に債務者の財産を確保しておく手続きが「仮差押」です。

1-2.仮差押の効果

仮差押をすることによって生じる効果には、主に以下の2つの効果があります。

①債務者による財産処分の禁止

仮差押は、仮差押の対象となった財産の処分禁止という法的効力があります。

②債務者への心理的プレッシャー

仮差押は、訴訟や強制執行の前段階として行われますので、仮差押された債務者は「今後訴訟や強制執行により自分の財産が処分されてしまう可能性がある」という危機感を持ちます。

また、事業者としては、預貯金や売掛金などの仮差押を受けると、金融機関や取引先にもその事実が知られてしまいますので、信用不安を招くというリスクがあります。

このように、仮差押には債務者に心理的プレッシャーを与える事実上の効力がありますので、仮差押をすることで裁判まですることなく任意に支払いを受けられる可能性もあります。

2.仮差押の流れ

債務者の財産を仮差押する場合の流れは、以下のようになります。

2-1.仮差押の申立て

仮差押をするためには、まず裁判所に仮差押命令申立書を提出して、仮差押の申立てを行います。

対象となる裁判所は、相手方の所在地を管轄する裁判所または仮差押の対象となる財産のある裁判所等になります。

2-2.裁判官との面接

仮差押は、債務者に知られずに対象財産の保全を行う必要があります。よって、裁判のように公開の法廷で両当事者が主張立証を行うという審理方法ではありません。
債務者の呼び出しや債務者の審尋は行われず、基本的には申立時に提出された書面に基づき判断がなされます。

債権者と裁判官との面談が実施されることもありますので、その対応は必要です。

2-3.担保金の決定・供託

審理の結果、裁判官が仮差押命令の要件を満たすと判断すると、担保決定がなされて、債権者に対して担保金の供託が求められます。

仮差押は、裁判のように十分な時間をかけて債権の存否を審理しているわけではありませんので、場合によっては誤った判断により債務者に損害を与えてしまうおそれがあります。そこで、債権者に対して一定の担保金の供託を命じることで、債務者に生じる損害の担保とするのです。

なお、担保金の額は、債権の種類や仮差押対象財産の種類によって異なりますが、請求額の10~30%程度が一般的な水準です。

2-4.仮差押命令の発令

担保金の供託後、供託正本の写しを裁判所に提出すると、仮差押命令が発令されます。

仮差押命令が第三債務者に送達された時点で、仮差押の効力が生じます。

3.差押との違い

仮差押と似た言葉に「差押」というものがあります。
仮差押と差押とではどのような違いがあるのでしょうか。

3-1.差押とは

差押とは、強制執行のために債務者の財産の処分を禁止する手続きをいいます。
強制執行の申立てを行い、債務者の財産の差し押さえをした後は、所定の手続きに従い債務者の財産が換価・処分され、債権者への支払いに充てられます。

つまり、債権者としては差し押さえをすることより債権回収を実現することができます。

3-2.仮差押と差押の違い

仮差押と差押は、ともに債務者の財産の処分を禁止するという点で共通する制度です。しかし、両者には以下のような違いがあります。

①根拠法令の違い

仮差押は、債務者の財産を保全することを目的として行われる手続きであり、民事保全法に基づいて手続きが行われます。

これに対して差押は、債務者の財産から強制的に債権回収を行うことを目的として行われる手続きで、民事執行法に基づいて手続きが行われます。

②債務名義の要否

差押は、債権者が債権を有していることが要件となりますので、差押の申立てにあたっては確定判決などの債務名義が必要になります。すなわち、裁判をして勝訴判決を得なければ、差押の手続きはできません。

他方、仮差押は債務者の財産を保全する手続きになりますので、債務名義がなくても申立てをすることができます。

③担保金の要否

仮差押は、債権が存在するかどうかが確定的ではない状況で行われますので、判断の誤りにより債務者に生じた損害を担保するために担保金の供託が必要になります。これが、債権者によって負担になる部分もあるでしょう。

しかし、差押は裁判などの手続きで債権の存在は明らかですので、担保金の供託は不要です。

4.仮差押に失敗しない(空振りにならない)ために

仮差押は、裁判所から仮差押命令が第三債務者(金融機関や取引先)に送達された時点の残高に対して効力が生じます。預金残高や売掛金残高がないときに送達されると、仮差押は空振りにより終了します。

そのため、預貯金債権や売掛金債権を対象として仮差押をする場合、残高が最大になるタイミングで仮差押をするのがより効果的といえるでしょう。

失敗・空振りといった事態を防ぐためにも、まずは弁護士に相談して、仮差押の手続きを進めていくようにしましょう。
弁護士であれば、債務者の財産調査申立てのタイミングなど債権回収に関する豊富なノウハウを有しています。

より確実に債権回収を実現したいのであれば、お早めにあたらし法律事務所の弁護士にご相談ください。

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